エリートの罠
自己に置いて優れた能力や突出した才能を手に入れることは簡単ではない。もちろん、遺伝によって初めから賢い人も入れば、本人が努力をしていることを認識できていないこともあると思う。しかし、多くの人、特にエリート層にとっては自分は努力して頑張ったから能力を手に入れたと思い、自分の才能について確固たる自信を持っていることが多い。それは高慢であることや謙虚であることにかかわらず自分の能力には一定の信頼を置いていると思う。なら、どうして彼らの中にも成功できない人や幸せになれない人がいるのか?
※今回の記事では「Think smart」を参考にして述べていきたいと思う。
職業による視点の偏り
ある国で殺人事件が起きたときに職業によって見方が変わる。経済学者は殺人による経済的な損失について述べ、医者は命に関わるけがをした時の応急処置について述べる。ジャーナリストは事件を少し誇張して述べ、心理学者は加害者の精神的な状態に注目するだろう。
誰もが自分の得意分野に偏ったものの見方をするという「職業による視点の偏り」がある。これは一見、害の内容に見えるが問題があるときもある。それは、自分の得意分野による対処法が問題に合わないときにも使用する可能性があるからだ。
親になった母が夫を子どものように扱う。コンサルタントの夫が家でもすぐにアドバイスしてくる。教師である友達が友人を生徒のように説教する。考察をする人は作者の意図してない細かな表現や些細な違いからも意図や意味を汲み取ろうとする。政治家や中央銀行の総裁などの些細な発言からも経済に関わる予測をする経済学者。
脳はすべての情報を処理できるコンピューターではなくて、いろいろなツールが詰まった道具箱のようなものである。だから、自分の脳に2,3の道具を追加しておくことが必要だと思う。その道具は得意分野から大きく離れた思考モデルを身に着けることが必要だと思う。
スキルの錯覚
企業家として一回成功した人は企業家としての能力や才能、そして経験がある。しかし、企業家が連続して会社をおこして成功する人はどうして少ないのだろうか?スティーブ・ジョブズやイーロン・マスクのような人物は少数派である。しかし、企業家は早期に引退する人や自分の会社を手放せない人が多いわけではないし、むしろ少ない。
この結果から、成功するのか否かをわけるのはスキルや能力よりも運による影響が大きい。これは「スキルの錯覚」と呼ばれる。しかし、この意見は成功者ほど受け入れることができない。「私の成功は単なる偶然なのか?」と考えてしまうからである。
もちろん、成功のためには才能や努力は必要だが、それらだけが決め手にはならない。決定的な要因は「運」である。金融業界では「単なる偶然」によって成功するかどうかが決まる。長期にわたって成功している人を比較したときに能力の高い人のほうが成功している期間が長いのなら、能力は決定的な要因である。しかし、能力で成功が決まるのなら、最初の会社で成功できているので二社目、三社目と成功できると思う。そして、経営者が有能だったとしてもCEOの能力を考慮して二社を比較した時の割合の差は10%しかなかった。官僚がいくら優れた能力があるからといって、国の運営がうまくいくわけではないことは最近の事情からもわかると思う。
ウォーレン・バフェットもこう述べている。「経営者としてのあなたの業績は、あなたの漕ぎ方が効率的かどうかより、あなたが乗っているボートの性能によって決まるところが大きい」。個人能力よりもそのときの環境や時代による影響(運)が大きい。
領域依存性
数学者は数学においては人並外れた才能を持っている。私たちには呪文のようにもおもえるような数式を解くことができるし、直感的にはわかりにくいモンティホール問題(ドアが三つあってはずれのドアの選択肢を一つ消してくれる時は交換したほうがあたりを引く確率が上がる)のようなものも今では確率的に最適解がわかっている。しかし、彼らに経済界を具体例に置いたときにモンティホール問題のような思考の罠に陥った。
物事に対する洞察力は分野を超えて発揮できるわけではない。これは「領域依存性」と呼ばれている。将棋のプレイヤーが囲碁やオセロも上手なわけではない。
また、職業上における能力をプライベートにまで落とし込むことは特に難しい。ひとつ優れた能力があったとしてもそれを別の領域に移行させるのはできない可能性が高い。医者が喫煙者であることは多く、人間関係や恋愛に問題のあるセラピストもいるし、会社ではリーダーでも家では能力を発揮できない人もいる。心理学者だけど、うつや二極性障害など精神的に負荷がかかり自分で治療できないこともある。
それは学業においても同じである。学年で一番の優等生が社会的な成功を収めているわけではない。むしろ、落ちこぼれがのちの成功を収めることもある。
まとめ
これら三つの思考の罠は意識していても陥ってしまうことが多い。なので少しずつでいいから自分で意識して改善していけばいいと思う。思考の罠は人間の本能に基づいていることも多いので陥っても自己嫌悪にならず、切り替えて受け入れる姿勢が大切だと私は思う。
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