人間の自由意思
私たちは普段から、”自分の意志”で好きなものを食べ、好きなものを買い、好きな人と過ごしている。もちろん、そうではなくて嫌いな人と毎日顔を合わせている人も少なくはないと思うが、基本私たちは自ら選択していると思っている。しかし、実際に自分自身で自由に選択できているのだろうか?
目に見えないものに支配されている
では、具体的に考えてみよう。おそらく、この記事を読んでいる人のほとんどがブラジルではなくて日本に住んでいると思うが「日本」というものは実際に存在するのだろうか?もちろん、土地があるからものとして存在しているのかもしれないが、あくまで存在しているのは場所であり「日本」が物理的に存在しているわけではない。このような事例はほかにも、お金や基本的人権、宗教などとしてこの世界に存在しているように感じる。しかし、なぜ我々この世界に実存しないものを信じたり、縛られたりするのだろうか?
構造主義とは:目に見えないものの正体
構造主義とは個別の要素が位置や関係によって意味づけられて、相互に関連したもの同士(構造)が私たちの「社会や文化」を形成しているという20世紀において哲学・文学理論において重要となったものだ。とは言っても、どんなものかわかりずらいと思うので、わかりやすく言うと、私たちは「目に見えない構造」に支配されているということだ。と言っても本当に私たちが目に見えないものに支配されているのかはわからないし、そもそも構造とはどんなものかわかりずらいと思う。なので、次の段落からは構造主義の具体的な説明に入る。
構造、目には見えない鎖
そもそも、私たちは何か物事について考えるときは個々の要素に着目して考えることが多い。例えば、人間関係について考える時もAさんの性格やBさんの気質やCさんの役割など個々の要素に着目して物事を考えてしまう。しかし、構造主義ではあくまでも人間関係を成り立たせている構造に着目する。具体例で言えば、AさんとBさんの関係そのものや、Cさんのグループでの役割など個々の人物の役割よりも相互の関係やつながりを重視する。まさに、構造は私たちのみえないところで私たちを縛っているものになっている
まとめ
- 構造主義とは私たちは「目に見えない構造に支配されている」という思想
- 私たちが物事を考えるときは普段個々の要素に着目することが多いが、構造主義では相互の関係に着目する
※あくまでイメージなので実際の構造主義とは違うかもしれないことを考慮してください
構造主義の起源:レヴィー=ストロース
構造主義の人は様々いるが、その中の一人であるレヴィー=ストロースについて取り上げる。クロード・レヴィ=ストロース(1908~2009)はユダヤ系フランス人の人類学者だ。彼は人類学に言語学の理論と音楽の理論を持ち込んだ人物だ。彼はスイスの言語学者であるソシュールの理論を用いた。
ソシュールの言語学の主だったところは
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言葉が現実の世界を説明するのではなく、言葉が現実を作る。
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言葉が何を指すかは物質世界の在り方とは独立しており(関連していなくて)、システムの内部で決まる
つまり、言葉によってこの世界が形づくられてその言葉は現実のものと作用するわけではなくて言語のシステム(体系)で決められているということ。また、ストロースはソシュールの言語学をの話を聞いたヤコブソンがその言語学を基にして発展させた音韻論も人類学に導入している。
ヤコブソンの音韻論とは、
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音楽自体には「実体」は存在しない
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ある音は他の音との関係によって初めて意味を持つ(音程)
ヤコブソンは音楽が二項の対立から意味が生まれることを見つけた。そして、言語学と音韻論の二つの理論を取り入れたのがストロースだった。
まとめ
構造主義とは「目に見えない構造」が私たちの世界を形作り、形成し私たちを縛っている「構造」となっている。という考え方だ。日本は他国との関係、お金は取引による人との関係、基本的人権も同じように集団での人間関係、そして宗教は人間関係や神と人類との関係などによって形作られると構造主義では考える。つまり、物事を考えるときに「実体」ではなく「関係」に注目し、関係から集団が形成されると考えた。構造は文化的、社会的な関係によって初めて実体をもって姿を現す。そのため、構造は目に見えなくて透明であり、抽象的なものになりやすい。だからこそ、人に説明するのが難しく大雑把になりやすい。そのため、抽象的な要素が強く、現実の多様性を反映できてないとして批判もあり、後にポスト構造主義やポストモダニズムが生まれることとなる。みなさんは構造主義についてどのように考えるだろうか?
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